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秋です。落ち葉の季節です。
順平の住んでいる住宅地も、めっきり、秋めいてきました。
路地と路地の間を織り成す、瓦や煉瓦葺きの家々の屋根にも、斜めから陽射しはうらうらと照り付け、お日様が光り輝く青空は、手が届きそうにも無い程に遠く、庭先に赤や白のピンクのコスモスは揺れているのです。ぴんと張ったお母さんの洗濯物を思わせる、爽やかな秋風に。
爽やかな秋風。柔らかな朝の光の中を、鏃の形を造り上げて、鳥の群れが渡って行きます。何処に飛んで行くのでしょうか。
順平は、掃き掃除です。竹の箒で落ち葉を掃いて集めてゴミ袋に、ちり取りで丁寧にかき集めて、捨てるのです。
ブナに楓に椛にポプラ。まだまだ有ります。
えらいね。お家のお手伝い?
いえいえ。違います。久し振りに良く晴れた日曜日。青空の下で、人々はそれっとばかりに、溜まっている用事を片付けに走りました。
町内会総出で、町内の大掃除です。
楽しみはお昼御飯。今頃は、神社の境内を掃き掃除している事だろうお母さんの事を考えながら、順平は、ぱくりと、コンビニエンスストアから買って来た梅干しのおにぎりを、一口食べました。温かくて、良い匂いがします。
消火栓の向こうで、つむじ風が起きました。くるくる廻りながら、順平の方にやって来ます。
「おにぎりが欲しいのか?」
いい加減、掃いても掃いても、肩に道路に落ちかかって来る枯葉にうんざりして順平は言いました。
「お掃除を手伝ってくれたら、一個あげても良いぜ。」
くすくす笑いながら、順平はもう一個の包み紙を開けます。
すると其処に、トラックが走って来る特有の物音がするのでした。T字になった路地を走って行きます。
奮発して五個はちょっと、いくら好物でも多かったかな、と思う順平でした。夕飯は、お母さんの話によると、混ぜ御飯らしいのです。お茶を飲みながらの休憩時間、
「あれ、あのトラック。」
引越し荷物の運搬専門の運輸会社のトラックが、街路樹の梢の下を走り抜けて行きます。。不思議な事に、そのトラックが行く前方には、緑色や黄色や赤になりかけの樹木が並び。走って行く後ろには、葉がすっかり落ちた裸の幹が寒そうに並んでいるのです。
「誰の引越しなんだろう?」
誰かに同意を求めるように、順平は、辺りを見回しました。すると、空地の片隅に、ちょこんと、枯葉や落ち葉の小さな山が出来ているのでした。
「変だなあ、いつの間に?」
首をひねる順平の肩に落ちかかるのは、最早、枯葉でも落ち葉でも有りませんでした。
白い、雪が、ふわり、羽毛の如くに落ちかかります。
今日集めた枯葉や落ち葉は、もしかしたら、先刻のトラックが、どこか遠くへあのピカピカ光る荷台に載せて、運んで行くのかも知れません。ふと、順平は、そう思いました。
秋は終わり、冬が、近付いているのです。
* The End *
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