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「此処から先には、何も無い。存在しない。」
何が有ったのか、大人達は、過去の事は、何も話そうとしない。
蒼い空の下に、無表情でぶっきらぼうな、石と鉄の中間の素材で出来た壁が遥か高く、聳え立っていた。それは、挑戦を阻んでいるかのようにも見え、また、壁でぐるりを取り囲まれたこの“世界”を慈しむ物にも見えた。
「何も無いんだ。」
彼は、只一人、厚く頑健な壁に手を付いて叫んだ。
「壁を乗り越えて、壁の向こうに行った所で、何一つ有りはしない。」
その言葉を彼も納得したかに見えたその時。
つい、と光を受けて、何かが羽ばたきながら、壁の頂上に降り立つのが見えた。
彼の顔が、憧れに、くしゃくしゃと歪む。
そこに、蜻蛉が、一匹。
* The End *
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