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ある朝、ある風景

小鳥の啼き交わす声で、眼が覚めた。

昨夜は飲み過ぎた。

でも、絶対に、自分ひとりの責任では無い。

眼を覚ますと、いつもの寝室の天井が、朝の光の中で、眼に入る。

久し振りに、昔の友人に出会ったのだ。

頭痛がする頭で、どんな話を、居酒屋でしたのか、思い出そうとする。

色々だ。


子供の頃の事。学校の事。釣りの事。


熱いエールを何杯もお代わりして、何が悪い。


いつの間にだか、周りにいた人間を巻き込んで、乾杯の掛け声を繰り返していたような気もするが。


だったら、どうだと言うのだ?


大人が、自分の責任で飲むのなら、何も構わないのでは無いのか?

考え事をしながら、寝返りを打った時だ。

ベッドと平行して置かれている長椅子の上に、何かが、見慣れないものが、有るのが、眼に入った。

(縫いぐるみ?)

ジェシカにそんな趣味は有ったろうか?

緑色の長い、先が折れた帽子を被った妖精の人形の、縫いぐるみ何て・・・・・?
なかなか、良く出来ている。点々と散ったそばかすと言い、古風なデザインの靴と言い。
しかも、凝った事に、この縫いぐるみ、あるいは人形は、自分の腕を枕にして、眠っているポーズをとっているのだ。長椅子に、ぴったりだ。

次の瞬間、ぎょっとして、その拍子に、息が止まりそうになった。

それ・・・妖精の人形は、寝息を洩らしていた。大人の半分以下の小さな身体は、確実に、規則正しい呼吸を繰り返している。

がば、と、慌てて、ベッドの上、身を起こした。

(どの位、酔っ払おうと、妖精を、家に引っ張り込んで、泊めちまったのか?)

殆ど同時に、レモン色の眼が、開いた。
こちらを見るなり。身を竦ませていると見て、

「パードン。」

乾いた紙の様な声で言うや、僅かに開いた窓の隙間から、ひらりと、身を躍らせ、消えた。

窓を開け放つも、其処には最早、誰もいない。足音すら残さずに、その不思議な存在は消えてしまった。

証拠すら、残さずに・・・・?

顔を洗おうと、居間に入った。その眼前に、また、不思議なものが、現れる。
其処に、立ち尽くした。

「ジェシカ、これは、一体、どうしたんだい?」

「何が?ダーリン?」

「この季節に、桃なんて、驚くじゃないか。」

「え?本当?まあ、本当だわ。何故、こんな所に、桃が?それも、二つも?」

「不思議だね。」

「ええ、何だか、お礼みたい。」

腕を組み、首をひねる二人の窓の外、白い雪が、また、ひらひらと、天から舞い落ち始めていた。

 

              * The End *

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