私は一生、元には戻れない。
少なくとも、あなたと出会う前の私には。
暗闇の中で目を覚ました魂よ。
闇の向こうに月と星を見んとする者よ。
乾いた瞳を見開いて、己が紅の血と引き換えにしても、
何を見たいと希求するのだろう。
・・・・・世界を。
世界を見たい。
私とあなたを生み出した、此世を。
どんなに目を凝らしても、
厚ぼったいカーテンに閉ざされた室内に、何が見えると言うのか。
何も見えはしない。
生まれたての瞳。いまだ弱々しい視界。
神よ。それは祈る。彼は祈る。
神よ。その意味も知らず。 焼け付くような如き、思いを込めて。
祈り続ける。
一瞬。部屋が明るくなる。
天を引き裂く、紫の光が。
闇夜に、光を、寸刻の朝を、甦らせる。
それは雷。閃光の刃。
魂に血が通う身体に、暖かな福音をもたらした物。
そう。
畢竟、人間は所詮、暗闇の中で朝を待ちきれずに目覚め、
愛する者を、己を愛してくれる者を欲して、
一人、華奢な身体で足を運び、生命尽きるまで、
地上を彷徨う宿命なのだ。
人工の雷を用い、科学者と言う似非造物主の手によって甦らされた〔彼〕と、
その点、何処が違うと言うのだろう。
It's alive!!
あなたを愛している・・・・・。
* The End *
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