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虫の声が、とても綺麗な夜です。
読書に疲れて、ベランダに出ました。夜風が気持ち良いです。欠け始めた月を見て、欠伸をしたら、何の偶然か、月の光が凝って生まれた、月の雫。
それが、零れ落ちて来ました。
まっすぐ、此処にいる私の、口から喉に。
勿論、生まれてはじめての体験です。
思わず、ごくんと飲み下しました。
甘くて、美味しい。ジェルみたいな食感です。あえて言うならば、月の味。月光のグミ。
一番、似ているのは、レモンで香を付けた、カルピスでしょうか?
嘘だろうって。
いやいや。どうやら、月の光に魔法の力が宿ると言うのは、本当らしいのです。
こうやって、君の夢に、特別出演と言う、私の年来の夢が叶いました。
おや。取り敢えず、お茶でも如何でしょうか?
カルピスかって?あなたが望むなら。
煎茶、緑茶、コーヒー、紅茶。
花のお茶でも構いませんよ。ボタンでも。薔薇でも。カトレアでも。
なるほど、ロシアン・ティーですか。
御茶請けに、ラスクや、
菫の砂糖菓子は、如何です?
月の魔法は、強力だって?噂では、
春一番に咲いた花の露の次らしいですがね。
さて。気になっていることを聞いても宜しいでしょうか?
この夢の記憶を、消しますか?あなたは、それを、望みますか?
明日の朝、眼が覚めたその時は。
もちろん、私に関する記憶、一晩だけの魔法使いとなったこの私の記憶も無くなっていますが。
折角の特別出演。残念な事は確かですが。
どうぞ。ゆっくり、考えて下さい。
時間は、たっぷり有りますから。。。。
* The End *
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